現物投資家向け：不動産トークン投資で『投資後の手間』はどこまで減る？ 具体的な削減ポイントを解説
経験豊富な現物不動産投資家の皆様にとって、不動産投資で得られる収益は魅力的である一方、物件の維持管理や入居者対応など、投資後の様々な「手間」が負担に感じられることもあるかと存じます。
新しい投資手法である不動産トークン投資は、「管理不要」という点がよく強調されますが、具体的に現物不動産投資で発生していたどのような手間が削減されるのでしょうか。
この点について、現物不動産投資の経験をお持ちの方の視点に立ち、不動産トークン投資がもたらす「投資後の手間」の具体的な削減ポイントを詳しく解説いたします。
現物不動産投資で発生する主な「投資後の手間」
まず、現物不動産投資において、物件の購入後に発生する主な手間を改めて整理してみましょう。
- 入居者募集と選定: 空室が出た場合、新たな入居者を募集し、内見対応や審査、契約手続きを行う必要があります。
- 賃料の集金と管理: 毎月の家賃を集金し、入金確認や滞納者への督促対応を行います。
- 物件のメンテナンスと修繕: 定期的な清掃や点検、設備の故障や老朽化に伴う修繕手配、大規模修繕の計画と実施などが必要です。
- 入居者からの問い合わせ・トラブル対応: 騒音問題、設備不良、近隣トラブルなど、入居者からの様々な問い合わせや問題に対応します。
- 契約更新や退去手続き: 賃貸借契約の更新手続き、退去時の立ち会いや原状回復費用の精算などを行います。
- 書類作成と保管: 賃貸借契約書、重要事項説明書、修繕履歴、収支計算書など、様々な書類の作成、管理、保管が必要です。
- 税務関連手続き: 毎年の確定申告に向けた収支の計算、必要書類の準備、税理士との連携などを行います。
- 管理会社との連携（委託している場合）: 管理会社に委託している場合でも、報告の確認、指示出し、費用精算などのやり取りが発生します。
これらの手間は、物件数が増えるほど、また築年数が経過するほど増加する傾向にあり、投資家様の貴重な時間や労力を消費することになります。
不動産トークン投資で削減される具体的な「手間」
不動産トークン投資は、このような現物不動産投資における「投資後の手間」を大幅に削減できる可能性を秘めています。その具体的な削減ポイントは以下の通りです。
- 入居者対応が不要: 不動産トークン投資で投資する対象不動産は、通常、専門の資産運用会社（AM会社）やプロパティマネジメント会社（PM会社）が一元的に管理・運営します。投資家様が直接、入居者の募集、選定、契約手続き、賃料集金、滞納督促、入居者からの問い合わせやクレーム対応を行う必要は一切ありません。
- 物件管理業務が不要: 物件の清掃、定期点検、設備の修繕、大規模修繕計画、業者選定、費用の支払いといった煩雑な物件管理業務も、運用会社や管理会社が行います。投資家様が物件の状態を気にかけたり、修繕手配に奔走したりする手間はなくなります。
- 賃貸借契約や更新手続きが不要: 不動産トークンは不動産そのものを所有するのではなく、不動産から生じる経済的利益を受け取る権利などをトークンという形で保有します。そのため、現物不動産投資のような賃貸借契約の締結や更新手続きといった法的な手続きに関わる手間は発生しません。
- 多数の書類管理が不要: 現物不動産投資では様々な書類を保管・管理する必要がありますが、不動産トークン投資では、投資家様が自身で管理する書類は大幅に削減されます。投資に関する情報は、運用会社からのレポートや、場合によってはブロックチェーン上の記録として確認できます。
- 管理会社との煩雑なやり取りが減少: 現物不動産投資で管理会社に委託している場合でも、詳細な報告の確認や個別の指示出しが必要な場面がありますが、不動産トークン投資では、運用会社からの定期的な運用報告を確認することが主となり、個別の物件管理に関する詳細なやり取りは基本的に発生しません。
このように、不動産トークン投資では、現物不動産投資で多くの投資家様が負担に感じている、物件や入居者に関する大半の「手間」から解放されます。これは、経験豊富な投資家様が、これまでの知見を活かしつつも、より効率的に資産運用を行える大きなメリットと言えます。
なぜ手間が削減されるのか？ その仕組み
不動産トークン投資で手間が削減されるのは、その仕組みに理由があります。
不動産トークンは、特定の不動産、あるいは不動産信託受益権などから得られる収益を裏付けとして発行されるデジタル証券です。投資家様はこのトークンを購入することで、対象不動産の共同所有者や受益者となり、そこから発生する賃料収入や売却益の一部を、保有するトークンの割合に応じて受け取る権利を得ます。
不動産そのものの所有権を直接持つわけではないため、法的な管理責任や実務的な運用義務は発生しません。これらの業務は、投資対象となる不動産を選定し、スキームを組成した「発行体」と呼ばれる事業者や、その事業者が委託する専門の運用会社・管理会社が行います。
投資家様は、運用会社からの定期的な運用報告を受け取ることで、投資状況を確認できます。収益の分配も、指定口座への振込など、現物不動産投資における家賃集金のような個別の手続きは不要です。
手間がゼロになるわけではない点も理解しておく
不動産トークン投資は多くの手間を削減できますが、完全に手間がゼロになるわけではありません。投資家様として、以下の点についてはご自身で対応する必要があります。
- 投資判断: どの不動産トークン案件に投資するか、ご自身の投資目標やリスク許容度に合わせて判断する必要があります。案件情報の収集と比較検討は、現物投資と同様に重要です。
- 運用状況の確認: 運用会社から提供されるレポートや情報を定期的に確認し、投資対象の状況を把握することが望ましいです。
- 税務申告: 不動産トークン投資で得た収益（分配金や譲渡益）は課税対象となります。確定申告が必要となる場合があり、これに関する手続きはご自身で行うか、税理士に依頼する必要があります。現物投資と同様に、税務に関する知識や対応は必要です。
- 法改正や市場動向の情報収集: 不動産トークン投資に関する法律や税制は変化する可能性があります。また、不動産市場全体の動向も投資判断に影響します。これらの情報を自身で収集することは、賢明な投資を続ける上で重要です。
このように、不動産トークン投資は「物件や入居者に関わる実務的な手間」を大幅に削減しますが、「投資家としての判断や手続き」がすべて不要になるわけではありません。しかし、日々の煩雑な管理業務から解放されることで、より戦略的な情報収集や投資判断に時間を割くことができるようになります。
信頼できる案件を見極める重要性
手間が少ないからといって安易に投資を決めるのは危険です。不動産トークン投資においても、現物投資と同様に、あるいはそれ以上に、投資対象や組成スキームの信頼性を慎重に見極める必要があります。
特に、管理・運用を専門会社に一任することになるため、運用会社の信頼性や実績、提供される情報の透明性は非常に重要です。組成スキームの健全性、対象不動産の評価、収益計画の実現可能性などを、現物投資で培った「目利き力」を活かしてしっかりとチェックすることが、詐欺や予期せぬトラブルを避ける上で不可欠です。
まとめ
不動産トークン投資は、現物不動産投資家様が長年向き合ってきた、物件や入居者に関する多くの「投資後の手間」を劇的に削減できる新しい投資手法です。入居者対応、物件管理、契約手続きといった煩雑な業務から解放されることで、より効率的に、複数の優良物件への分散投資なども検討しやすくなります。
もちろん、投資判断や税務手続きなど、投資家として必要な手間はゼロにはなりませんが、実務負担の軽減は、現物不動産投資で培った経験を活かしながら、新しい形で資産形成を目指す上で大きなメリットとなるでしょう。
手間が減る一方で、投資先の信頼性を見極める重要性は変わりません。提供される情報や事業者の実績をしっかり確認し、ご自身の投資スタイルに合った案件を選ぶことが成功の鍵となります。不動産トークン投資がもたらす効率性と、ご自身の豊富な経験を組み合わせることで、新たな不動産投資の可能性を広げることができるかもしれません。