『家賃収入』と『売却益』は不動産トークンでどう変わる?現物投資家向け収益の仕組み解説
経験豊富な不動産投資家の皆様にとって、「家賃収入」や「売却益」は馴染み深い収益の形かと存じます。管理の手間をかけながら物件を所有し、賃料収入を得たり、市場の変動を見て売却益を目指したりといった経験をお持ちでしょう。
近年注目されている不動産トークン投資は、こうした従来の不動産投資の概念を大きく変える可能性を秘めています。「管理不要」や「小口化」といったメリットが語られることが多いですが、肝心の「収益」はどのように生まれるのでしょうか。そして、それは現物不動産投資における家賃収入や売却益とどのように異なるのでしょうか。
この記事では、現物不動産投資家の皆様が抱えるであろうこうした疑問にお答えするため、不動産トークン投資における収益の仕組みを、従来の収益と比較しながら分かりやすく解説いたします。
不動産トークン投資における収益の二つの柱:分配金と譲渡益
不動産トークン投資で得られる収益は、大きく分けて二つの種類があります。これは、現物不動産投資における「家賃収入」と「売却益」に相当するものとお考えください。
-
分配金(インカムゲインに相当)
- 現物投資の「家賃収入」との比較: 現物不動産投資では、ご自身で物件を管理し、入居者から直接、あるいは管理会社を通じて家賃収入を得ます。不動産トークン投資の場合、投資対象となる不動産が生み出す賃料収入などが、そのトークンを保有する投資家に対して定期的に分配されます。この分配金は、投資対象となる不動産の賃貸状況や運営状況によって変動する可能性があります。
- 仕組み: 不動産トークンは、多くの場合、特定の不動産または不動産信託受益権などを裏付け資産として発行されます。運営者(不動産特定共同事業者など)が不動産を管理・運用し、得られた賃料収入などの収益から経費を差し引いた利益を、トークン保有割合に応じて投資家に「分配金」として支払います。ご自身で入居者募集や家賃回収、物件修繕といった管理業務を行う必要はありません。
- 支払い頻度: 案件によりますが、多くは数ヶ月に一度など、定期的に支払われるケースが多いです。
-
譲渡益(キャピタルゲインに相当)
- 現物投資の「売却益」との比較: 現物不動産投資では、物件の価値が購入時より上昇した場合に、その物件を売却することで売却益(譲渡益)を得ます。不動産トークン投資の場合、物件そのものを売却するのではなく、「保有しているトークン」を売却することで譲渡益を目指します。
- 仕組み: 不動産トークンは、多くの場合、流通市場(セカンダリーマーケット)や運営者による買い取りなど、様々な方法で売却することが可能です。投資対象の不動産価値が上昇したり、市場でのトークン需要が高まったりすることで、購入時よりも高い価格でトークンを売却できれば、その差額が譲渡益となります。逆に、価値が下落すれば譲渡損となる可能性もあります。
- 流動性との関係: 現物不動産は売却に時間がかかることが多いですが、不動産トークンは仕組み上、比較的短い期間での売却が可能になる可能性があります。ただし、売却できるかどうかは市場の流動性に依存します。
収益性の評価方法と現物投資との違い
不動産トークン投資の収益性を評価する際は、主に「分配金利回り」と「譲渡益の可能性」を考慮します。
- 分配金利回り: これは現物不動産投資の「表面利回り」や「実質利回り」に近い考え方です。年間で得られる分配金の合計額が、投資元本に対してどのくらいの割合になるかを示します。物件の運用状況(入居率、経費など)によって変動するリスクがあります。
- 譲渡益: これは将来的な不動産価値の上昇や市場でのトークン価格上昇に期待するものです。現物不動産投資と同様、将来の価格変動を予測することは難しく、不確実性の高い要素です。しかし、小口化されているため、比較的少額で複数の物件に分散投資することで、特定の物件価格下落リスクを軽減できる可能性があります。
現物不動産投資では、ご自身の努力(リフォーム、入居者対応など)が家賃収入や物件価値に直接影響を与える側面がありますが、不動産トークン投資では、物件の運用はプロである運営者に委ねられます。投資家は、運営者の能力や透明性を見極めることが重要になります。
また、管理の手間がなくなることは、直接的には収益を増やすわけではありませんが、その分の時間や労力を他の投資機会の探索や本業に充てられるという点で、間接的に全体の収益性向上に貢献すると考えることもできます。
不動産トークン投資の収益に関する注意点とリスク
- 分配金は保証されない: 投資対象の不動産運用がうまくいかない場合(空室が多い、大規模修繕が必要など)、分配金が減少したり、支払われない可能性もあります。
- 市場価格の変動リスク: トークンの流通市場がある場合、需要と供給のバランスや不動産市場全体の動向によってトークン価格が変動します。売却時に投資元本を割り込むリスクがあります。
- 流動性リスク: まだ発展途上の市場であるため、常に売却したい価格で買い手が見つかる保証はありません。特に流通市場が未成熟な案件では、換金が困難になる可能性も考慮が必要です。
- 運営者リスク: 不動産の運用を行う事業者の信頼性や能力は、収益性に直結します。運営者が破綻した場合の影響も考慮しなければなりません。
- 法的な仕組みによる収益の受け取り方の違い: 不動産トークンは、匿名組合契約や合同会社による出資など、様々な法的な仕組みで設計されることがあります。これらの仕組みによって、収益の計算方法や受け取り方、税金のかかり方が異なる場合がありますので、投資契約の内容をよく確認することが重要です。税務については専門家にご相談ください。
まとめ
不動産トークン投資における収益は、現物不動産投資と同様に「分配金」(家賃収入に相当)と「譲渡益」(売却益に相当)が主となります。しかし、自身で管理を行う現物投資とは異なり、運用は専門家に任せ、トークンを保有することによって収益を得る形となります。
管理の手間がなくなる一方で、運用は運営者の能力に依存し、トークン市場の流動性リスクも存在します。現物不動産投資で培われた収益の見極め方やリスク感覚は、不動産トークン投資でも活かせますが、仕組みの違いを理解し、ご自身の投資スタイルやリスク許容度に合った案件を選ぶことが大切です。
投資を検討される際は、提示されている期待分配金利回りだけでなく、不動産自体の将来性、運営者の信頼性、契約内容、そして流動性リスクなどを総合的に判断されることをお勧めいたします。税金についても、現物不動産とは取り扱いが異なる場合がありますので、事前に税理士等の専門家にご相談されると良いでしょう。