不動産トークン投資で狙う「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」- 現物投資家が知るべき違い
不動産トークン投資で狙う「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」- 現物投資家が知るべき違い
現物不動産投資を長年経験されてきた皆様は、「家賃収入」による安定したインカムゲインと、「不動産の売却」によるキャピタルゲインという、二種類の収益の柱をご存知かと思います。新しい不動産投資の形として注目される不動産トークン投資においても、これらの収益は重要な要素となります。
しかし、不動産トークン投資におけるインカムゲインやキャピタルゲインは、現物不動産投資とは異なる側面を持っています。本記事では、不動産トークン投資で期待できるこれら二種類の収益について、その仕組みや現物投資との違いを分かりやすく解説いたします。
不動産トークン投資におけるインカムゲインとは
現物不動産投資における「家賃収入」に相当するのが、不動産トークン投資におけるインカムゲインです。これは、投資対象となる不動産が生み出す収益を、トークン保有者に分配する形で得られる利益を指します。
分配金として支払われる仕組み
不動産トークン投資では、対象不動産から得られた賃料収入やその他の収益(例えば、駐車場収入など)が原資となり、これを運用会社などを通じてトークン保有者へ分配金として支払われます。現物投資のように、ご自身で入居者対応や賃料回収を行う必要はありません。管理業務は運用会社が行い、収益は定期的に(例えば毎月や四半期ごと)投資家に支払われる仕組みが一般的です。
現物投資家にとっての大きな違いは、この収益が非常に小さな単位、すなわちトークン保有比率に応じて分配される点です。数万円や数十万円といった小口から投資できるため、少額から安定した分配金収入を得る機会が生まれます。
不動産トークン投資におけるキャピタルゲインとは
現物不動産投資における「売却益」に相当するのが、不動産トークン投資におけるキャピタルゲインです。これは、保有している不動産トークンを、購入時よりも高い価格で売却することによって得られる利益を指します。
トークン価格の変動による利益
不動産トークンの価格は、対象となる不動産の市場価値の変動や、その不動産が生み出す収益性、あるいは不動産トークン市場全体の需給バランスなど、様々な要因によって変動します。対象不動産の価値が上昇したり、高い収益性が期待されたりすれば、トークン価格も上昇する可能性があります。この価格上昇局面でトークンを売却することで、購入価格との差額がキャピタルゲインとなります。
現物不動産の売却は手続きが複雑で時間もかかりますが、不動産トークンであれば、発行体が用意する取引プラットフォームや、セカンダリーマーケット(二次流通市場)があれば、比較的容易に売却できる可能性があります。この流動性の高さは、現物投資とは異なる大きな特徴の一つと言えるでしょう。ただし、常に希望する価格で売却できる保証があるわけではなく、市場環境によっては価格が下落し、損失(キャピタルロス)が生じる可能性もございます。
現物不動産投資との違いを比較
インカムゲインとキャピタルゲインという収益の種類自体は共通していますが、不動産トークン投資ではその性質や得られる方法に現物投資との違いがあります。
| 比較項目 | 現物不動産投資 | 不動産トークン投資 | | :-------------- | :------------------------------------------------- | :----------------------------------------------------- | | インカムゲイン (得られる形) | 家賃収入として直接または管理会社経由で受け取る | 分配金として運用会社などから定期的に受け取る | | インカムゲイン (管理) | ご自身または管理会社による物件管理が必要 | 運用会社がすべて行うため、管理の手間は一切不要 | | インカムゲイン (投資単位) | 物件単位での投資が基本(高額) | 小口化されているため、少額から投資可能 | | キャピタルゲイン (得られる形) | 不動産を直接売却し、購入価格との差額を得る | 保有トークンを売却し、購入価格との差額を得る | | キャピタルゲイン (流動性) | 売却手続きが複雑で時間を要することが多い | プラットフォーム等での売却が可能で、比較的流動性が高い(市場による) | | キャピタルゲイン (価格決定) | 個別交渉や不動産市場の動向 | 対象不動産の価値、市場全体の需給、プラットフォームの取引状況など | | 投資判断 | 物件の状態、立地、管理体制、将来性などを総合的に判断 | 対象不動産の詳細、運用会社の信頼性、期待利回り、リスクなどを総合的に判断 |
大きな違いは、やはり「管理の手間」が不要になる点です。インカムゲインを得るための日々の管理業務から解放されます。また、キャピタルゲインを狙う際の売却手続きも、現物不動産のそれに比べてシンプルになる可能性があります。
投資戦略とリスクについて
不動産トークン投資の案件には、安定したインカムゲインを重視するタイプや、将来的なキャピタルゲインをより強く期待するタイプなど、様々な性質のものがあります。ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、どちらの収益をより重視するかを検討し、案件を選ぶことが重要です。
ただし、どちらの収益も保証されているわけではありません。不動産市場の低迷による賃料下落や空室発生は分配金(インカムゲイン)に影響しますし、不動産価格の下落はトークン価格に影響し、売却時に損失(キャピタルロス)が生じる可能性もございます。また、運用会社の倒産や不正、プラットフォームの技術的な問題など、不動産トークン投資特有のリスクも存在します。
信頼できるプラットフォームを選び、案件ごとのリスクを十分に理解した上で投資判断を行うことが不可欠です。案件情報に目を通す際は、対象不動産の詳細だけでなく、運用会社の情報、過去の運用実績(もしあれば)、契約内容、リスクに関する記載などをしっかりと確認することが大切です。「詐欺ではないか」といった不安を払拭するためにも、情報の透明性が高く、法規制を遵守しているかどうかも見極めるポイントとなります。
法的な側面や税金についても、現物不動産投資とは異なる部分があります。得られた分配金やトークン売却益には税金がかかりますが、その計算方法や申告方法などは、個別の状況によって異なります。詳細については、必ず税務専門家にご相談ください。
まとめ
不動産トークン投資は、現物不動産投資と同様にインカムゲインとキャピタルゲインの両方を収益として期待できる新しい投資手法です。しかし、管理の手間が不要であること、小口から投資できること、流動性の可能性など、現物投資とは異なる特性を持っています。
これらの違いを正しく理解し、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、インカムゲインとキャピタルゲインのどちらを重視するかを検討することで、より適切な案件選びが可能になります。常にリスクを意識し、信頼できる情報に基づいて慎重に投資判断を行うことが、不動産トークン投資を成功させる鍵となります。