不動産トークン投資はREITやクラファンとどう違う? - 現物投資家が知りたい小口化投資の比較
現物不動産投資の新しい選択肢としての小口化投資
不動産投資において、まとまった資金が必要であったり、物件の管理に手間がかかることは、多くの経験豊富な現物投資家様が感じていらっしゃる課題ではないでしょうか。こうした課題を解決する手段として、近年「小口化投資」が注目されています。
小口化投資と一口に言っても、REIT(不動産投資信託)や不動産クラウドファンディングなど、いくつかの種類があります。そして、最近では不動産をトークン化する「不動産トークン投資」という新しい手法も登場しています。
現物不動産投資のご経験がある方にとっては、「これらの小口化投資はそれぞれどう違うのか?」「不動産トークン投資はREITやクラウドファンディングと比べてどのようなメリット・デメリットがあるのか?」といった疑問をお持ちかもしれません。
この記事では、現物不動産投資の経験をお持ちの皆様に向けて、不動産トークン投資をREIT、不動産クラウドファンディングと比較しながら、それぞれの特徴や違いを分かりやすく解説いたします。ご自身の投資スタイルや目的に合った選択肢を見つけるための一助となれば幸いです。
不動産トークン投資、REIT、不動産クラウドファンディングの基本的な仕組み
比較に入る前に、それぞれの投資手法の基本的な仕組みを簡単に確認しておきましょう。
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不動産トークン投資: 特定の不動産や不動産信託受益権を裏付けとしたデジタル証券(セキュリティトークン)を購入することで、対象不動産の所有権やそこから得られる収益の一部を小口単位で保有・取得する仕組みです。ブロックチェーン技術を活用することで、取引の透明性や記録の信頼性を高めています。
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REIT(不動産投資信託): 投資家から集めた資金で、専門家が複数の不動産(オフィスビル、商業施設、住宅など)を取得し、そこから得られる賃貸収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。証券取引所に上場されており、株式のように売買が可能です。
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不動産クラウドファンディング: インターネットを通じて不特定多数の投資家から資金を集め、その資金で特定の不動産プロジェクト(開発、取得、運営など)を行う仕組みです。投資家は出資額に応じて、プロジェクトから得られる収益の分配を受けます。主に匿名組合契約といった形式がとられます。
各投資手法の比較
それでは、これらの小口化投資手法を様々な観点から比較してみましょう。現物不動産投資との違いも踏まえながら見ていきます。
| 比較項目 | 不動産トークン投資 | REIT(不動産投資信託) | 不動産クラウドファンディング | 現物不動産投資 | | :----------------- | :--------------------------------------------------- | :------------------------------------------------- | :---------------------------------------------------- | :------------------------------------------------ | | 投資単位(小口化) | 比較的小額(数万円〜)からの投資が可能 | 比較的小額(数万円〜)からの投資が可能 | 比較的小額(1万円〜)からの投資が可能 | 大きなまとまった資金が必要(数百万〜数億円) | | 投資対象 | 特定の個別の不動産や信託受益権 | 複数の種類の不動産(専門家が選定し分散投資) | 特定の個別の不動産プロジェクト | 特定の個別の不動産(自身で選択) | | 管理の手間 | ほぼ不要 | ほぼ不要(専門家が運用) | ほぼ不要(事業者が運用) | 多岐にわたる管理業務が必要 | | 流動性(換金性) | サービスによっては比較的高め(取引市場があれば) | 比較的高め(証券取引所で売買) | 低め(原則、運用期間中の途中解約は不可) | 低め(売却に時間がかかる場合がある) | | 価格変動リスク | 対象不動産の価値や市場動向により変動 | 投資対象不動産全体の価値や市場動向により変動 | プロジェクトの成否や運用期間中の市場変動により変動 | 対象不動産の価値や市場動向により変動 | | 倒産・信用リスク | 運営プラットフォームや裏付け資産に関するリスク | 運用会社の信用リスク | 運営事業者(プラットフォーム)の信用リスク | 自身の信用リスク(ローンなど) | | 透明性 | ブロックチェーンにより取引履歴の透明性が高い場合がある | 運用報告書等で公開される(ポートフォリオ全体) | プロジェクトごとの情報公開(匿名組合契約の内容など) | 自身で管理する情報 | | 運用方法 | 案件を選んで投資(部分的に自身で判断) | 専門家に一任(ポートフォリオ全体の動向を追う) | プロジェクトを選んで投資(運用は事業者に一任) | 自身で運用・管理または管理会社に委託 | | 税金 | 金融商品に準じた課税(譲渡益、分配金) | 配当所得として申告分離課税または総合課税を選択 | 雑所得または事業所得(匿名組合契約の場合) | 不動産所得、譲渡所得、固定資産税等 |
現物投資家にとっての選択肢としての比較考察
現物不動産投資の経験をお持ちの皆様が、これらの小口化投資を検討する上で、特に重要なポイントを掘り下げて考えてみましょう。
管理の手間からの解放
現物不動産投資最大のメリットの一つが、管理の手間が大幅に軽減される点です。入居者対応、修繕手配、賃料回収など、これまでご自身で行っていた、あるいは管理会社に委託していた煩雑な業務は、不動産トークン投資、REIT、不動産クラウドファンディングのいずれにおいても、原則として投資家が行う必要はありません。これは、管理負担を負担に感じていらっしゃる山田良子様のような投資家様にとって、大きな魅力と言えるでしょう。
投資単位とリスク分散
現物不動産投資では、まとまった資金が必要となるため、投資できる物件数に限りがあり、分散投資が難しいという側面があります。
一方、REITや不動産クラウドファンディング、そして不動産トークン投資は、いずれも小額から投資が可能です。これにより、複数の案件や銘柄に分散して投資を行うことが容易になります。特にREITは、最初から複数の不動産に分散投資されています。不動産トークン投資も、異なる種類の不動産やエリアのトークンに分散投資することで、リスクを低減することが期待できます。
流動性
現物不動産投資は流動性が低い資産です。売却したいと思っても、買い手が見つかるまで時間がかかったり、希望価格で売却できなかったりする可能性があります。
REITは証券取引所に上場しているため、比較的高い流動性があります。市場が開いている時間であれば、いつでも売買注文を出すことができます。 不動産クラウドファンディングは、基本的に運用期間中の途中解約はできません。満期まで資金が拘束されるため、流動性は低いと言えます。 不動産トークン投資の流動性は、利用するプラットフォームに取引市場があるかどうかに左右されます。取引市場が整備されていれば、REITほどではないにしても、現物不動産よりも高い流動性が期待できる場合があります。ただし、まだ新しい市場であるため、取引量が少なく、希望する価格やタイミングで売買できない可能性も考慮する必要があります。
投資対象と運用方法
現物不動産投資では、ご自身の目利きで特定の物件を選んで投資します。 REITでは、プロの運用会社が様々な不動産を選定し、ポートフォリオを組んで運用します。投資家は個別の不動産ではなく、ポートフォリオ全体の成果に投資することになります。 不動産クラウドファンディングでは、事業者が提案する特定の不動産プロジェクトに対して投資家が出資するかどうかを判断します。運用自体は事業者によって行われます。 不動産トークン投資では、特定の不動産や信託受益権がトークン化された案件を選んで投資します。案件によっては、その不動産の情報が比較的詳細に開示されるため、現物投資に近い感覚で個別の不動産を吟味して投資することができます。
信頼性や安全性、詐欺への注意点
新しい投資手法である不動産トークン投資に対して、「安全性は大丈夫か」「詐欺などのリスクはないか」といったご心配は当然お持ちかと思います。これは、REITや不動産クラウドファンディングを含むすべての投資において共通して重要な視点です。
どの小口化投資を選択する場合でも、以下の点に注意し、信頼性を慎重に見極めることが不可欠です。
- 運営会社の信頼性: 金融商品取引業や宅地建物取引業などの必要な許認可を取得しているか、会社の設立年数や実績、財務状況などを確認しましょう。上場企業や大手企業が運営しているプラットフォームは、一定の信頼性の目安となります。
- 情報開示の透明性: 投資対象となる不動産の情報(所在地、築年数、賃貸状況、評価額など)や、事業計画、リスクに関する情報が十分に開示されているかを確認しましょう。不透明な点が多かったり、良い情報ばかり強調されている場合は注意が必要です。
- 契約内容の確認: どのような権利を保有することになるのか、収益の分配方法、リスク負担の範囲、運用期間、途中解約の可否などをしっかりと理解することが重要です。特に不動産トークン投資の場合は、デジタル証券としての権利や仕組みを理解する必要があります。
- 法規制への対応: 不動産トークン投資は、金融商品取引法に基づく規制(第一種金融商品取引業など)や、関連する法律(宅地建物取引業法など)に従って行われています。法規制を遵守している事業者が提供するサービスを選ぶことが安全性の基本となります。
- 「絶対儲かる」「元本保証」といった謳い文句に注意: 投資には必ずリスクが伴います。元本や利回りが保証されているかのような甘い話には絶対に騙されないようにしましょう。リスク説明が曖昧だったり、過度にメリットだけを強調する案件は、詐欺である可能性が高いです。
不動産トークン投資においては、上記に加え、利用するプラットフォームが、セキュリティ対策をしっかりと行っているか、また、裏付けとなる不動産の評価や管理が適切に行われているかなども確認すべき点となります。信頼できるプラットフォームを選ぶことが、安心して投資を行うための第一歩です。
まとめ
不動産トークン投資、REIT、不動産クラウドファンディングは、いずれも現物不動産投資とは異なる特性を持つ小口化投資手法です。
- REITは、複数の不動産に分散投資されており、証券取引所で手軽に売買できる流動性の高さが魅力です。運用は専門家に一任したい方に向いています。
- 不動産クラウドファンディングは、特定のプロジェクトを選んで投資でき、比較的高い利回りが期待できる場合もありますが、流動性は低めです。
- 不動産トークン投資は、個別の不動産を選んで小口投資できる点や、サービスによっては現物不動産よりも高い流動性が期待できる点が特徴です。管理の手間がかからず、ブロックチェーンによる透明性もメリットとなり得ます。
現物不動産投資の経験をお持ちの皆様にとっては、管理の手間軽減や小額からの分散投資が可能になる点が共通のメリットと言えます。それぞれの特徴やリスク、流動性の違いなどを理解した上で、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、これらの小口化投資を検討されてはいかがでしょうか。不動産トークン投資はまだ新しい分野ですが、他の小口化投資手法と比較検討することで、その位置づけやご自身にとっての有用性がより明確になるはずです。
投資を行う際には、どの手法であっても、提供元の信頼性や情報開示の透明性を十分に確認し、リスクを理解した上で慎重に判断することが大切です。